【12月のコラム】冬本番!ヒートショックから身を守る健康管理のポイント

12月に入り、寒さが本格化してまいりました。飯塚市でも朝晩の冷え込みが厳しくなり、最低気温が10℃を下回る日も増えています。この時期に特に注意していただきたいのが「ヒートショック」です。今回は、冬の健康管理とヒートショック予防についてお話しします。
❄️ ヒートショックとは?
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、心臓や血管に負担がかかる現象です。特に冬場の入浴時に多く発生し、意識を失ったり、最悪の場合は命に関わることもあります。
ヒートショックが起こるメカニズム
- 温かい部屋から寒い脱衣所へ
→ 血管が収縮し、血圧が急上昇 - 熱いお風呂に入る
→ 血管が拡張し、血圧が急低下 - 浴槽から急に立ち上がる
→ 脳への血流が不足し、めまいや失神
⚠️ 衝撃的なデータ
入浴中の急死者数は年間約19,000人と推計されており、これは交通事故死者数(約3,000人)の約6倍にも上ります。その多くがヒートショックに関連していると考えられています。
🎯 ヒートショックを起こしやすい人
以下に該当する方は特に注意が必要です。
- 65歳以上の高齢者:血圧変化をきたしやすく、体温調節機能が低下
- 高血圧・糖尿病・脂質異常症の方:動脈硬化が進んでいる可能性
- 心臓病・脳卒中の既往がある方
- 肥満の方
- 睡眠時無呼吸症候群の方
- お酒を飲んで入浴する習慣がある方
- 熱いお風呂が好きな方(42℃以上)
🏠 家の中の危険な温度差

ヒートショックは、10℃以上の温度差がある場所で特に起こりやすくなります。冬の一般的な家庭では、以下のような温度差が生じています。
家の中の温度差の例
- リビング:20〜22℃(暖房)
- 廊下・脱衣所:10〜15℃
- 浴室:入浴前は5〜10℃
- トイレ:10℃前後
この温度差が、私たちの体に大きな負担をかけています。
🛡️ 今日から実践!ヒートショック予防の7つのポイント
1️⃣ 脱衣所・浴室を暖める
入浴前に脱衣所と浴室を暖めておくことが最も重要です。
- 小型の暖房器具を脱衣所に設置
- 浴室暖房機能を活用(ある場合)
- 入浴前にシャワーで浴室全体にお湯をかける(簡易的な暖房効果)
- 浴槽のふたを開けて湯気で浴室を暖める
目標:脱衣所と浴室の温度を18〜20℃に保つ
2️⃣ お湯の温度は41℃以下に

熱いお湯は血圧を急激に変動させます。
- 推奨温度:38〜40℃
- 42℃以上のお湯は避ける
- お湯の温度を確認してから入浴
3️⃣ かけ湯をしてから入浴
いきなり湯船に浸からず、必ずかけ湯をしましょう。
- 足先から徐々に体にお湯をかける
- 心臓から遠い部位(手足)から始める
- 10回以上かけて体を温度に慣らす
4️⃣ 浸かる時間は10分以内
長時間の入浴は体に負担をかけます。
- 目安は5〜10分程度
- 半身浴がおすすめ(心臓への負担が少ない)
- のぼせる前に出る
5️⃣ 浴槽から急に立ち上がらない
急に立ち上がると、脳貧血を起こす可能性があります。
- まず浴槽の縁に腰かける
- 少し休んでからゆっくり立ち上がる
- 手すりを活用する
6️⃣ 入浴前後に水分補給
入浴中は大量の汗をかき、血液が濃くなります。
- 入浴前にコップ1杯の水を飲む
- 入浴後も水分補給を忘れずに
- 脱水を防ぎ、血栓予防にもなります
7️⃣ 家族に一声かけてから入浴
万が一の事態に備えて、家族に声をかけましょう。
- 「お風呂に入ります」と声をかける
- 一人暮らしの場合は、携帯電話を脱衣所に置く
- 長時間反応がない場合は確認してもらう
🚫 入浴を避けるべき時
以下の状況では入浴を控えましょう。
- 飲酒後:血圧が不安定になり、転倒リスクも高まる
- 食後すぐ:食後30分〜1時間は避ける
- 血圧が不安定な時:測定して異常値がある場合
- 体調が悪い時:発熱、めまい、倦怠感がある場合
- 降圧剤を服用した直後:薬の効果で血圧が下がりやすい
🏥 冬の血圧管理も重要

高齢者は室温が1℃下がると、血圧が約1mmHg上がると言われています。
冬の血圧管理のポイント
- 定期的な血圧測定:朝晩2回、同じ時間に測定
- 室温管理:居室を18〜20℃に保つ
- 適切な服装:重ね着で体温調節
- 薬の服用管理:指示通りに継続
- 急な温度変化を避ける:外出時は防寒対策を徹底
💡 血圧手帳の活用
血圧を記録することで、季節による変動パターンが分かります。当院でも血圧手帳をお渡ししていますので、お気軽にお申し出ください。
🌡️ トイレも危険地帯!
ヒートショックは浴室だけでなく、トイレでも起こります。
トイレでの予防策
- 小型の暖房器具を設置
- 便座を温める(温水洗浄便座を活用)
- 夜間のトイレは廊下の照明をつける
- いきみすぎない(血圧が急上昇)
⚠️ もしもの時の対応
入浴中に異変を感じたら、または家族の様子がおかしい時は、すぐに対応しましょう。
こんな症状に注意
- めまい、ふらつき
- 動悸、胸の痛み
- 頭痛、吐き気
- 手足のしびれ
- 呼びかけへの反応が鈍い
緊急時の対応
- すぐに119番通報
- 浴槽の栓を抜く(溺水防止)
- 可能なら浴槽から引き上げる
- 体を温め、呼吸・脈拍を確認
- 意識がない場合は心肺蘇生
🏥 大庭クリニックでできること
当院では、冬の健康管理に関するご相談を承っております。
- 血圧管理:定期的な血圧測定と薬の調整
- 健康相談:冬の健康管理についてのアドバイス
- 慢性疾患管理:高血圧、糖尿病、心臓病などの管理
- 訪問診療:通院困難な方への在宅医療
特に高齢者の方や、持病をお持ちの方は、冬場の体調管理について一度ご相談ください。
まとめ
ヒートショックは、適切な予防で防ぐことができます。特に12月から2月の厳寒期は、入浴時の事故が最も多い時期です。
予防の基本は「温度差をなくすこと」です。脱衣所と浴室を暖める、お湯の温度を下げる、かけ湯をするなど、今日からできることばかりです。
また、血圧が気になる方、持病をお持ちの方は、定期的な健康チェックも大切です。体調に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
寒い冬も、安全に健康に過ごしましょう。
📍 大庭クリニック 診療時間
電話:0948-25-5678
診療時間:午前9:00〜12:30
休診日:木曜午後・土曜午後・日曜・祝日
アクセス:西鉄バス「伊岐須」バス停徒歩1分
駐車場完備
※年末年始の診療スケジュールは、別途お知らせいたします。
大庭クリニック 院長 中島 雄一郎
参考情報:
消費者庁「冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!」
厚生労働省「ヒートショックを予防しましょう」